2004-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「花咲く乙女たちのかげに」の終わり

アルベルチーヌ・シモネに抱擁(ほうよう)と接吻(キス)を拒絶されてしまった語り手だったが、一週間後にバルベックの海岸へ戻ってきたアルベルチーヌは語り手にこう言うのだった。 『許してあげるわ。あなたを苦しめたので自分でも後悔しているくらいよ。…

アルベルチーヌ・シモネ-3

『…。でも、今晩はいっしょに過ごせるのよ。ポンタン伯母には知られっこないわ。わたし、アンドレにさよならを言ってくるわね。それじゃ、あとでね。早くいらっしゃいよ。二人っきりの時間がたっぷりあるのよ!』 アルベルチーヌ・シモネにそう言われた語り…

アルベルチーヌ・シモネ-2

語り手と「ポロ」帽を目深に被った自転車を引く美少女アルベルチーヌ・シモネとの恋は順調に進むか、といえば、けっして順調にすすんではいかないところが『失われた時〜』の『失われた時〜』らしさだった。アルベルチーヌの友達、アンドレ、ジゼール、ロズ…

アルベルチーヌ・シモネ-1

バルベックの海岸通りを行く美少女たちのグループとの再開、合コンを、何かと画策する語り手だったが、その機会はまったく思ってもみなかった方向からやってきた。 画家エルスチールのアトリエで、海辺を行く美少女たちの一人、アルベルチーヌ・シモネを紹介…

エルスチールと一枚の絵

バルベックの海辺を行く美少女たちを認めたその日から、彼女たちのことばかりを想って日々を過ごす語り手だったが、二度と出会うことはなかった。 そんな或る日、サン=ルーと共にある夏の夜の、海のバルベックのレストランで知遇を得た、祖母も最も偉大な芸…

海辺を行く美少女たち-2

それ自体が光を放ちながら空をゆく一個の彗星(すいせい)のように一団となって堤防沿いに歩んでくる美少女たちは、最初、語り手が出会った時は、その一人一人を見分けることは全く困難で、まるでどんな顔立ちや体つきをしているのか、分からなかったのだが、…

男はつらいよ

なぜいま、楽天の日記で、「男はつらいよ、フーテンの寅」関連の日記を書いたかというと、寅さんとリリーさん(浅丘ルリ子)が初めて出逢ったのが第11作の「寅次郎忘れな草」なのだったが、この映画のことをシャルリュス男爵が語り手に贈ったモロッコ革の本…

海辺を行く美少女たち

シャルリュス男爵が忽然と姿を消したノルマンディはバルベックの夏の海岸の語り手だったが、そこはそれ、ゲルマント家の輝ける星サン・ルーと共に、年長のユダヤ系フランス人の友人、ブロックのもとを訪れたり、海岸通りを行く人々を眺めたりして、祖母と過…

忘れな草

シャルリュス男爵を囲んだ晩餐会の席で、サン・ルーは男爵の前で、語り手が、夜しばしば寝つくまでのあいだに覚える悲しみのことを話してしまった。恥ずかしくなった語り手は寂しく部屋へと戻るのだったが、少したつと、シャルリュス男爵が語り手の部屋を訪…

シャルリュス男爵の横顔

自分を見詰める四十がらみの不思議な長身の男のことを思いながら、バルベックの海のグランドホテルへと戻った語り手だったが、昼の食事に出ようと、ホテルの前で祖母を待っていると、祖母の女子高時代の同級生であるヴィルパリジ侯爵夫人がゲルマント家の輝…

その男

シャルリュス男爵はサン=ルーと語り手が待っても、待っても、その姿をみせないのだった。 ある朝、11時頃、バルベックのグランド・ホテルに戻ろうとした語り手は、ホテルの近くのカジノの前で、そう遠くないところから、誰かにジッと見つめられたような気が…

噂の叔父

語り手の祖母の女学院時代からの級友、ヴィルパリジ侯爵夫人の甥っ子、「太陽の全光線を吸収したようなブロンドの肌と、金色の髪をした」美貌の青年貴族、ロベール・ド・サン=ルー=バン・プレー侯爵はあの、由緒あるゲルマント公爵家の「星」だったが、リ…

三本の木と夢の風景

この断章、『三本の木と夢の風景』は極めて短い、文庫本(集英社)で六ページ弱である。しかし、内容は深い。ノルマンディーの海の避暑地、バルベックの「グランドホテル」に到着した祖母と語り手は、ゲルマント公爵家の一族の、ヴィルパリジ侯爵夫人と『ま…

暁を彩る牛乳売りの娘

その夏をブルターニュのバルベックの海岸で過ごすべく、語り手は祖母とともに1時22分パリ発の汽車に乗るのだったが、汽車は明け方、朝靄のなかをある村の小駅に停まるのだった。すると、停車中の汽車に向かって、大柄の、頬をバラ色に染めた美少女が、“カフ…

土地の名・土地

プルーストの小説「失われた時を求めて」第二篇「花咲く乙女たちのかげに」第一部「スワン夫人をめぐって」に続いて第二部「土地の名・土地」はこう始まる。 『二年たって祖母といっしょにバルベックに出発したとき、私はもうジルベルトに対してほぼ完全な無…

鈴木道彦教授の全訳版の帯にはこうある わたしは海の鼓動を聴いていた そして、アルベルチーヌに出会った

花咲く乙女たちのかげに

語り手がジルベルトのGのサインを『これではまるでAではないか、アルベルト…』とつぶやいたアルベルトとは、この『花咲く乙女たちのかげに』の後半、『土地の名=土地』の舞台となる、バルベックの海岸で、運命の出逢いをする女性、アルベルチーヌ・シモネを…

バラの花束

ジルベルトにふられた語り手に優しくしてくれるスワン夫人オデットは、年を増すごとに美しくなり、白いマフ、白貂のコートの似合う、それはそれはシックな女性だったが、そのスワン夫人、オデットは語り手に『私の娘(ジルベルト)はあなた(語り手)に会え…

夕靄(ゆうもや)のなかに沈む太陽

語り手はこう語る。 『最後にジルベルトに会いにいったときは、雨だった。…』 こうして、いつしか語り手から心を移してしまったジルベルトだったが、それでもジルベルトへの想いが断ち切れない語り手は未練たらしく、ジルベルトとは会えなくなってしまってい…

恋の終わり

恋の終わりにはどういう終わり方があるのだろうか? 自然消滅か、一方通行か?あれほど好きだった曲なのに、『ねえ、この曲いいわよ!』という甘いささやきでふと耳にした曲に、すっかり心を奪われて、かつてはあれほど毎日聴いていた曲も、いつしか遠い思い…

『仲違い』

『仲違い』は『なかたがい』です、『なかちがい』ではありません。若干は『じゃっかん』です、『わかせん』ではありません。 『あれー,ジルベルトからの初メールだァ!!!』と喜んだ語り手は早速、スワン家へ“お招ばれ”に赴くのだった。語り手はスワン家の人々…

秋の対談

maa:miiさん、こんにちは。お久しぶりです、といっても「夏コミ」以来ですから、まだ一ヶ月ちょっとですが…。 mii:あの日はお台場の花火大会があって、アクセスにものすごく時間がかかってしまって、六本木ヒルズとか、ご案内出来なくて申し訳なかったと思っ…

〔なぜスワンの恋が読み難いのか?〕

工藤庸子はその著書「プルーストからコレットへーいかにして風俗小説を読むかー」中公新書1023 でこう書いている。 「…。わたしは「風俗を反映しつつ、それ自体が風俗的存在でもある文学」という観点から、作品を読み、時代のなかに位置づけたいと考えている…

『花咲く乙女たちのかげに』

原題はA l'ombre des jeunes filles en fleurs プルーストの小説「失われた時を求めて」の全訳版の読書日記は第一篇「スワン家の方へ」第一部「コンブレー」までは順調だったが、第二部「スワンの恋」から怪しくなってきた。これは抄訳版のときもそうだった…

ルベル

ジルベルトからもらった初メールに有頂天になった語り手だが、最後の“ジルベルト”というサインで、はたと考え込んでしまうのだった。綺麗で達筆なジルベルトのサインの“G”はまるで“A”のように読めるのだ。これではまるでアルベルト…。 どちらもルベルがメ…

海辺のフカフカ

今年の夏はホントに暑い日が多かったが、それでも何回か僕のバルベックの海の別荘に行って、夏の午後をロッキンチェアに揺られながら、村上春樹さんの『海辺のカフカ』を読んで過ごそうとしたら、東京から持参した枕があまりにも気持ち良くて、眠ってしまい…

『シャンゼリゼのジルベルト』

医者は昔から“駄洒落好き”が多いのだろうか? 語り手の『スワンさん達とお友だちになりたいわ〜!』という願いを心ならずも叶えてあげたのは、医者のコタールだった。コタールは患者に対して、 『牛乳入り(オー・レ)、牛乳入り(オー・レ)はお気に召すで…

広告塔

語り手はまだ、芝居というものを実際に観たこともないうちから、女優ラ・ベルマに憧れを抱いているのだった。語り手のクラス・メートのあいだでは女優のベスト・テン選びが流行っていたが、女優ラ・ベルマはベスト・ワン女優サラ・ベルナールに次いで、常に…

鈴木道彦教授の全訳版の帯にはこうある ジルベルトとの初恋は破れ パリからバルベック海岸へ

『ブーローニュの森のスワン夫人』

語り手は、ブーローニュの森のいつもの散歩道、アカシア通りで、スワン夫人(美貌のオデット)を見かけることが出来ない時は、ひとりっきりになりたがっているように見せかけたい夫人達が良く行く散歩道、レーヌ=マルグリット通りでスワン夫人を見かけるこ…