スワン家のほうへ(9)

春の休暇のはじめは陽が早く沈むのだが、サン=テスプリ通りにたどり着くと、家の窓ガラスはまだ夕陽の残照をとどめ、カルヴァリオの丘の森の奥には深紅の帯が広がり、その帯がさらに先の池にも映し出されていた。真っ赤な夕映えのあとはかなり冷えこむことが多く、私の頭のなかでその赤さは若鶏がローストされる赤い火と結びついていた。散歩がもたらす詩的な楽しみのあとに、美食と熱気と休息の楽しみが期待できるのである。