2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第一篇 第一部 『コンブレー』の終わりに

ママンと過ごした夜のこと、『プチット・マドレーヌ』の思い出といった少年「語り手」の内面と深く関わる部分とは別に、 やはりこの第一部『コンブレー』では、「ゲルマントの方」と「スワン家の方」とい二つの方向の存在の重要性がクローズアップされている…

スワンの恋

以上で「失われた時を求めて」、第一篇「スワン家の方へ」、第一部「コンブレー」は終了し、次からは第二部「スワンの恋」へと移ります。

コンブレー

こんなふうにして語り手は、よく朝まで考えつづけるのだった、コンブレー時代のことを、まんじりともしなかった悲しみの夜のことを、またごく最近に一杯の紅茶の味によってそのイメージが戻ってきた多くの日々のことを、そして語り手の生まれる前にスワンが…

マルタンヴィルの鐘塔

「私たちはそれからまた先に道を続けた。すでにマルタンヴィルを離れてから少したって、しばし私たちについてきた村も見えなくなったとき、地平線にぽつんと残って、逃げてゆく私たちのことを眺めながら、マルタンヴィルの二つの鐘塔とヴィユヴィックの鐘塔…

コンブレー

語り手のメモは続くのだった。

スワン家の方へ

第一部「コンブレー」を読み終えた。明日にははてなダイアリーに感想が書ける。これで9月から第二部の「スワンの恋」に移る事が出来る。

高級娼婦

工藤庸子著「プルーストからコレットへ」中公新書刊は、僕がプルーストの「失われた時を求めて」を読むにあたっていろいろ読んできた本のなかでも、一、二を争う面白さだったが、とくに「スワンの恋」を読む時にはとても参考になる。 工藤先生はこの本のなか…

マルタンヴィルの鐘塔

「頭を野原から高く出し、たんなる平野に迷い込んだように、空に向かってマルタンヴィルの二つの鐘塔がそびえていた。やがてそれが三つになるのをわたしたちは見た。というのはマルタンヴィルの二つの鐘塔の正面に、大胆に身をひるがえしつつ、おくれてきた…

憧れのゲルマント公爵夫人

そして語り手がタピスリや幻燈やステンドグラスなどから想像するゲルマント公爵夫人は、貴婦人中の貴婦人だったが、実際に見るゲルマント公爵夫人は決して想像の世界を超えるものではなかったことに語り手は複雑な思いを抱くのだった。 語り手の想像の世界で…

コンブレー

語り手が小さい頃の長い休暇を過ごすコンブレーの家は一方は『スワン家の方(ほう)へ』と向かう散歩道であり、もう一方は『ゲルマントの方(ほう)』と呼ばれていて、あの、遠くメロヴィング王朝時代(5〜8世紀)にまで遡る貴族中の貴族、ゲルマント公爵…

冒涜と快楽

サディズムについての観念を語り手に抱かせたある体験は、メゼグリーズの散歩道をタンソンヴィルからさらに歩を進めたモンジューヴァンで起きたことなのだった。 ピアノ教師であり、作曲家でもあったヴァントゥイュはメゼグリーズの散歩道を先に行った、モン…

デニムの服を着た知らない男*1

白い服の婦人から少し離れて、デニムの服を着た知らない男の人が顔から飛び出しそうな目をじっと語り手の上に注いでいるのだった。

金髪の少女

メゼグリーズの散歩道の途中、タンソンヴィルのスワン家の生垣のあいだから、一本の小道が見え、赤褐色に近い金髪の少女が、手には庭いじりのシャベルを持ちながら、黒い瞳を輝かせて、バラ色のそばかすのある顔をあげて、語り手たちを眺めているのだった。…

コンブレー

バラ色のサンザシの匂いにジルベルトを感じて、まだ見ぬスワンの娘ジルベルトへの想いを募らせて、あれこれと想像する語り手だった。

タンソンヴィル

タンソンヴィルのスワン家の方のバラ色のサンザシhttp://www.ne.jp/asahi/sing/song/3stars/A-Wien/index2.htm http://homepage1.nifty.com/s-ozeki/benibana_sanzashi.htmからは、スワンの娘ジルベルトの匂いがするのだった。

メゼグリーズの散歩道

コンブレーの家から散歩に出るのには二つの方角があって、一つの方向はやや起伏に富んだショート・コースで“メゼグリーズの散歩道”、あるいはスワン家の前を通るので“スワン家の方”とも呼ばれていた。もう一方の散歩道はヴィヴォンヌ川http://presqueparadis…

ブロック

語り手に作家ベルゴットの作品を紹介してくれた年上の友人はユダヤ系フランス人のブロックだった。ブロックは語り手の父に、『ブロック君、雨、降っていましたか?』と訊ねられて、『雨が降ったかどうかは、まったく申し上げられませんね。ぼくは断然、形而…

ベルゴット

語り手が最初に作家ベルゴットの名を聞いたのは、年長の友人、ユダヤ系フランス人ブロックからだった。そして、ある日曜日、庭でベルゴットの本を読んでいると語り手の家を訪ねてきたスワンに声をかけられ、ベルゴットの作品を語り手に話したのは誰ですか、…

読書する少年

夏のコンブレーの自室で読書に集中している語り手に祖母は、とにかく部屋にいないで、外へ出なさいと言いに来るのだった。庭のマロニエの木陰で読書を続ける語り手には、読書に集中するあまり、コンブレーの鐘の音も聞こえず、気がつけば夕方になっていたこ…

コンブレー

心のなかの街角を曲がるとき、自分がどこにいるのか分からなくなりそうな時に、コンブレーの鐘塔はいつも語り手に、いまの位置を教えてくれるのだった。

はるかなコンブレーの鐘塔

コンブレーの中心には教会(エグリーズ)があり、町のどこからでも、その鐘塔を見ることができた。 サン=ティレールの鐘塔は、コンブレーがまだあらわれないうちにその忘れられない姿を地平線に刻みこんでおり、はるか遠方からでも見分けることができた。 …

コンブレー

ひと口含んだマドレーヌと紅茶は無意志的に語り手に全コンブレーを生き生きと甦らせたのであったが、語り手の寝室のあったコンブレーの家は、そのモデルとなったプルーストの父方の実家のあるイリエという町を、現在ではイリエ=コンブレーという名に変えて…

ママンに寄せる語り手の想い

語り手のママンに対する感情は「愛情」という言葉で表現されるけれど、そこには幼子が母を慕うといったほんのり暖かい気持ちをはるかに越えた複雑なものを感じます。 語り手は、母がおやすみの接吻をするために上がってくるのを今か今かと、待っている反面、…

コンブレー

ある読者の方から以下のメールをいただいた。 深い読み方で示唆に富んでいると思った。

プチット・マドレーヌ

眠れぬ夜にふと思い出すコンブレーに関する事どもの思い出はママンの朗読以外のものが失われてから、すでに多くの歳月の過ぎたある冬の一日、ひどく寒がっている語り手に、語り手の母は、ふだんは飲まない紅茶でも少し飲ませてもらったらというのだったが、…

鈴木教授の全訳版の帯にはこうある 一杯の紅茶からよみがえる コンブレーの全記憶

コンブレー

マドレーヌを浸した紅茶を飲んだ日も寒かったし、ある方のリクエストもあって、壁紙をwinterに戻しました。 一度目に読んだときにはそれほど心に触れることがなかったのに、二度目に読み返してみると深く心に染みこむものを感じ、ああ、ここで母親に対する愛…

散文を読む母

ジョルジュ・サンドの散文を読む母は、力強く打ち寄せる波をさえぎるようないっさいの偏狭と気取りを注意深く自分の声から追放して、まるで自分の声のために書かれたような文章、いわば母のような感受性の声域にすっぽり収まってしまう文章に、求められてい…

フランソワ・ル・シャンピ

結局、ママンは語り手の寝室へとやってきて、祖母の価値観、古き良き時代、「深窓の令嬢」思想が健在だったころの価値観の代表としての、祖母からの語り手への誕生日プレゼントの一つ、ジョルジュ・サンドの小説「フランソワ・ル・シャンピ」を読んで聞かせ…

シャルリュスさん

独身者が急に老け込むことがあるように、スワンさんはあの結婚以来、急に異常な老け方、度を越した老け方をしている、と語り手の両親は話し合うのだった。スワンさんの奥さんはシャルリュス何とかさんという変な男と一緒に住んでいるのはコンブレー中の皆が…