はるかなコンブレーの鐘塔

コンブレーの中心には教会(エグリーズ)があり、町のどこからでも、その鐘塔を見ることができた。
サン=ティレールの鐘塔は、コンブレーがまだあらわれないうちにその忘れられない姿を地平線に刻みこんでおり、はるか遠方からでも見分けることができた。
ミサを終えてからテオドールの店に入り、いつもより大きなブリオッシュを持ってきてください、と頼むときには、鐘塔は目の前にそびえ立ち、自分自身が清められた大きなブリオッシュさながらに、黄金色に焼けて、光る太陽を浴びながら、青空をその鋭い先端で突きさしているのだった。
また夕方、散歩から帰る語り手が、まもなく母におやすみを言わねばならず、明日まで母に会えなくなる瞬間が来るのだと思っていると、逆に鐘塔はこの一日の終わりに、とてもやさしくなったように見えるのだった。
教会の裏手でそこからは教会が見えないあたりに買い物に行かねばならないときでさえも、すべては、あちこちで家々の間から現れる鐘塔を中心に配列されているように思われ、鐘塔はこのように教会なしにそれだけで現れるときのほうが、ことによるといっそう感動的かもしれなかった。