2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

サイモン・ラトルのブラームス

あれは何年前のことだろうか?たしか、「蛇がピアス」とか、「蛇にもピアス」だったろうか、そういう動物虐待的題名で芥川賞を受賞、文壇に颯爽とデビューした若い女性作家さんがいらしたが、そのことはぼくに、フランソワーズ・サガンが 「悲しみよこんにち…

スワン家のほうへ(9)

春の休暇のはじめは陽が早く沈むのだが、サン=テスプリ通りにたどり着くと、家の窓ガラスはまだ夕陽の残照をとどめ、カルヴァリオの丘の森の奥には深紅の帯が広がり、その帯がさらに先の池にも映し出されていた。真っ赤な夕映えのあとはかなり冷えこむことが…

スワン家のほうへ(8)

「ああ、それじゃ、バルベックにお知り合いがおられるのでしょうか」と父は言った、「ちょうどこの子が、そこに祖母と二ヵ月滞在する予定なんです。もしかすると家内も参るかもしれません。」 ルグランダンはこの質問に不意をつかれたが、父をじっと見ている…

スワン家のほうへ(7)

コンブレーの庭のマロニエの木陰ですごした日曜の晴れた午後よ、私自身の凡庸なできごとを入念にとりのぞき、かわりに清流に洗われた土地での奇妙な冒険と憧れの暮らしを満載してくれた午後よ、お前はいまもなお私にそのときの暮らしを想起させてくれる。そ…