スワン家のほうへ(10)

リンゴの木々が、均斉のとれた間隔をあけて植えられ、ほかのどんな果樹の葉とも混同しようのない独特の葉でわが身を飾り、白いサテンのような大きな花弁を開いたり、ほんのり赤く頬をそめた内気な蕾の束をぶらさげていたりした。私は、メゼグリーズのほうではじめてリンゴの木が陽のあたる地面につくる丸い影に気づいたし、夕陽が葉むらの下にななめに織りあげる触れることのできない黄金色の光の絹にも気づいた。父はその光をスッテキで寸断しようとしたが、けっして 曲がることはなかった。