スワン家のほうへ(7)


コンブレーの庭のマロニエの木陰ですごした日曜の晴れた午後よ、私自身の凡庸なできごとを入念にとりのぞき、かわりに清流に洗われた土地での奇妙な冒険と憧れの暮らしを満載してくれた午後よ、お前はいまもなお私にそのときの暮らしを想起させてくれる。それはお前がー私が本を読みすすめ、昼間の熱気が収まってゆくあいだーお前の静まりかえり、よく響く、香しくて、澄みきった時間の、継起しつつゆっくりと移り変わり、葉の茂みのよぎるクリスタルのような空のなかに、そのときの暮らしを包みこみ、囲いこんでくれたからである。