2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

フランソワーズ

伯母の家政婦、コンブレー滞在中は語り手の世話をする、フランソワーズにママン宛ての手紙を託そうとする語り手だったが、フランスの、「地方」出身女性の典型のようなフランソワーズが手紙を持ってゆくのを断りはしないかと恐れる語り手だった。

おやすみの接吻(キス)

スワンさんの訪問のあった夜は、語り手は中途半端なかたちで、ママンの頬へのキスも出来ずにニスの臭いのする階段を昇って二階の寝室に向かうのだったが、満たされないママンへの思いを満たそうとして、ママンに宛てて手紙を書くのだった、「手紙では言えな…

隣人スワンの訪問

いつも、といってもあまりにも短い時間だったために不満だったが、ママンの“おやすみのキス”を寝室で一人、待ち焦がれている語り手にとって、コンブレーの隣のタンソンヴィルの別荘に滞在するユダヤ系フランス人の富裕な株式仲買人、シャルル・スワンさんが…

幻燈

夜半に目覚めて思い出すコンブレーでは、眠らなければいけない時間になって、寝室で一人ぼっちにならなくてはいけなくなることを考えて、毎日夕暮れどきになるとあまりにも悲しい顔になる語り手のことを心配して、夕食が始まるまでのあいだ、語り手の寝室の…

眠りと追憶

夜早く眠ろうとして、床(とこ)に就く語り手だったが、眠ったか眠らないか、判然としない意識の内で、さまざまな事どもをうつらうつら、思い出すのだった。 うつらうつら思い出す事どもは、ある時はコンブレーの祖父母の家の語り手の寝室だったり、またある…

『コンブレー』

マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」第一篇「スワン家の方へ」第一部「コンブレー」は以下のように書き始められる。 長いあいだ、私は夜早く床に就くのだった。

そして…

このゲルマント大公邸での午後の集い(マチネー)の数日後の深夜、静まり返ったパリのアパルトマンの一室で、家政婦のフランソワーズが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、白木の大机に向かって懸命に出筆活動をしている語り手の姿があった。 その原稿はこう…

『見出された時』

自分が書こうとしている小説と、自分に残されている生命の時間と、ヴィクトル・ユゴーの詩を思い浮かべながら、考える語り手だった。 「草は生い茂り、子供らは死なねばならぬ。」 しかし、と語り手は想うのだった、人々があらゆる苦悩をなめつくして死んで…