第一篇 第一部 『コンブレー』の終わりに

ママンと過ごした夜のこと、『プチット・マドレーヌ』の思い出といった少年「語り手」の内面と深く関わる部分とは別に、 やはりこの第一部『コンブレー』では、「ゲルマントの方」と「スワン家の方」とい二つの方向の存在の重要性がクローズアップされている。
「ゲルマントの方」は中世の伝説から連なる伝統的なフランスの歴史的時間の方向であり、一方「スワン家の方」は確固たる歴史 の上にとどまれなかった裕福なユダヤ人の個人的生活時間の方向ということができる。
「語り手」が高尚で神秘的だと感じていたゲルマント公爵夫人に対する幻滅、元高級娼婦であるスワン夫人オデットやその娘ジルベルトへの想い、音楽家ヴァントゥイユの娘の同性愛の現場の目撃など、やがて統合してゆく「二つの方」が「語り手」に及ぼす影響の片鱗が見え、今後に展開に期待を抱かせる第一部でした。


以上、Txxさんからいただいた、感想メールです。