高級娼婦

工藤庸子著「プルーストからコレットへ」中公新書刊は、僕がプルーストの「失われた時を求めて」を読むにあたっていろいろ読んできた本のなかでも、一、二を争う面白さだったが、とくに「スワンの恋」を読む時にはとても参考になる。
工藤先生はこの本のなかでプルーストの小説に出てくる女性たちを「レストラン」を目安にして三つのグループに大別している。
まずけっしてレストランに行かないのは、ゲルマント公爵夫人をはじめとする大社交界【グラン・モンド】の貴婦人たちと、語り手の母親のような堅実な家庭夫人。一方は自分の館で夜会を催し、他方は家族とともに食卓につく。この両者と対立するかたちで裏社交界ドゥミ・モンド】の女性がいる。この裏社交界ドゥミ・モンド】の女性、ココット、高級娼婦、という概念は僕にとっては非常に解り難いものだったが、オペラ「椿姫」が少しはその理解に役立ったかも知れない。
特にレヴァイン/メトのゼッフィレッリ演出の「椿姫」は映画仕立てではあるが、それだけにたいへんに豪華でプラシド・ドミンゴの最盛期の歌声も聴けて当時の華やかな【ドゥミ・モンド】の世界を垣間見たような気持ちになる。
また当時のレストランといえば、二人用の部屋で、食事をしたあとで、横のベッドで…、と現在の都市型ホテルでルーム・サービスを取るようなものだったらしいが、この一端はR.シュトラウスのオペラ、「バラの騎士」でも窺えよう。
さて、現代日本でも、この【ドゥミ・モンド】は存在しているのか?いると思う。K姉妹などその典型ではないだろうか?