『シャンゼリゼのジルベルト』

医者は昔から“駄洒落好き”が多いのだろうか?
語り手の『スワンさん達とお友だちになりたいわ〜!』という願いを心ならずも叶えてあげたのは、医者のコタールだった。コタールは患者に対して、
『牛乳入り(オー・レ)、牛乳入り(オー・レ)はお気に召すでしょう、いまやスペイン風邪が大流行だから。
ね、オーレ、オーレって皆いうでしょう!』とフランス語の牛乳入り(オー・レ)とスペイン語のいいぞ、いいぞ(オーレ、オーレ)の語呂合わせで、おやじギャグする日々だったのだが、そのコタールは語り手の主治医であったが、スワン夫人(オデット)の主治医でもあり、ヴェルデュラン夫人のサロンのメンバーでもあったのだ。
こうして、語り手とジルベルトとの初恋はスムースに進行してゆく、と思われたのだったが…。
語り手はジルベルトへの想いがつのるあまり、な、なんとジルベルトのお父さんのスワンを賛美する手紙を書いてしまったのだが、その、スワンを褒め称える手紙を読んだ当のスワンは『フフン』と鼻でせせら笑うのだった。それを聞いた語り手はその手紙をジルベルトから取り返そうとして、ジルベルトと取っ組み合いとなり、ジルベルトの胸に触れた語り手は逝ってしまうのだった。そしてジルベルトは語り手に『もっとする?してもいいのよ。』というのだった。
お下げ髪のジルベルトのおとめチックな表情のかげに隠された女性っぽい部分(語り手が「逝ってしまった」ことと、「もっと〜」って言われたこと)がショックで寝込んでしまった語り手(いわゆる「恋患い」)は、例の駄洒落好きの医者、コタール先生に往診してもらい、だんだん元気になるのだったが、そんな語り手を完璧に元気にさせてくれたのは恋するジルベルトからの初メールだった、メールにはこう書いてあった、『家(うち)に遊びに来てもいいわよ、ってママンが言っています。あなたがたびたびスワン家へ来てくれるといいなァ、友情をこめて、ジルベルト』。
わ〜イ、やったァ!