アルベルチーヌ・シモネ-2

語り手と「ポロ」帽を目深に被った自転車を引く美少女アルベルチーヌ・シモネとの恋は順調に進むか、といえば、けっして順調にすすんではいかないところが『失われた時〜』の『失われた時〜』らしさだった。アルベルチーヌの友達、アンドレ、ジゼール、ロズモンドたちにアルベルチーヌのことが好きということを悟られないように、あれこれ、あれこれ考えてはうじうじ、ぐずぐずと日々を過ごすのだった。
そんな或る日、アルベルチーヌ・シモネから『明日の朝、伯母のポンタン夫人のところに行くために朝一番の汽車に乗りたいから、今夜はあなたのグランド・ホテルにお泊りするわ〜。部屋に来てあなたのしたいことをして遊びましょ。そして明日の朝、私を駅まで送ってくれるとうれしいな〜。』と言われた語り手は、またもや夢が現実味を帯びてくると、あのジルベルトとの初恋の時と同じように、かえって超自意識過剰状態へと陥ってしまうのだった。