ルベル

ジルベルトからもらった初メールに有頂天になった語り手だが、最後の“ジルベルト”というサインで、はたと考え込んでしまうのだった。綺麗で達筆なジルベルトのサインの“G”はまるで“A”のように読めるのだ。これではまるでアルベルト…。
どちらもルベルがメインで、前にGが附くかAが附くか、一字違うだけでも大違い、別の女性になってしまう。カフカとフカフカも大違い、このさき語り手にとって、“運命の女”となる予定のアルベルトという名を、こうして初めて登場させる語り手は実に芸が細かい、そしてゲイなプルーストも実に芸が細かい、と想った。