噂の叔父

語り手の祖母の女学院時代からの級友、ヴィルパリジ侯爵夫人の甥っ子、「太陽の全光線を吸収したようなブロンドの肌と、金色の髪をした」美貌の青年貴族、ロベール・ド・サン=ルー=バン・プレー侯爵はあの、由緒あるゲルマント公爵家の「星」だったが、リベラルな思想の持ち主で、語り手にも優しく接してくれて、語り手とサン=ルーはすぐ親しくなるのだったが、サン=ルーはバルベックの海のすぐ近くのドン・シェールというところで兵役に従事していて、その休暇中にバルベックの海に侯爵夫人を訪ねてきたのだったが、サン=ルーは、しきりに語り手に、彼の伯父、上流階級の社交界で「プリンス」と呼ばれているシャルリュス男爵のことを語るのだった。
シャルリュス男爵は閉鎖的な上流社交界に君臨し、ちょっとした仕草が皆の模倣を生むくらいに注目を浴びているのだったが、また、極めて奔放な、個性的な人柄の持ち主だった。
その、サン=ルーの噂の伯父、シャルリュス男爵が、バルベックに二日ほど立ち寄るというので、サン=ルーは毎日、毎日、外出もせずに、シャルリュス男爵の到着をバルベックのグランド・ホテルで待っているのだった。