海辺を行く美少女たち

シャルリュス男爵が忽然と姿を消したノルマンディはバルベックの夏の海岸の語り手だったが、そこはそれ、ゲルマント家の輝ける星サン・ルーと共に、年長のユダヤ系フランス人の友人、ブロックのもとを訪れたり、海岸通りを行く人々を眺めたりして、祖母と過ごすバルベックのグランド・ホテルでのバカンスを楽しむのだった。そんな或る日の午後、バルベックの海辺の堤防の上に、不意に一群の美少女たちがあらわれる。
まだほんの堤防の突端のあたりに五、六人の少女がかたまって、まるで一つの奇妙な斑点を移動させるようにこちらに進んでくるのが見えた。彼女達はまるでどこからやって来たのか、一群のカモメがゆっくりと浜辺を散歩しているような風情であり、遅れた二、三羽は翼をばたつかせながらまた前の者に追いつくのだった。
カモメの群れのように生き生きとしたこの少女たちの出現に、語り手は一瞬にして心を奪われるのだった。