シャルリュス男爵の横顔

自分を見詰める四十がらみの不思議な長身の男のことを思いながら、バルベックの海のグランドホテルへと戻った語り手だったが、昼の食事に出ようと、ホテルの前で祖母を待っていると、祖母の女子高時代の同級生であるヴィルパリジ侯爵夫人がゲルマント家の輝ける星、ロベール・ド・サン=ルーと共に、ひとりの男を伴ってグランドホテルから出てくるのが目についた。
えっ、えっ?
そう、その男こそ、語り手をこもれびに揺れる木々の間から、バルベックの海の、グランドホテルの傍らのカジノから、語り手を食い入るように見詰めていた男こそが、サン=ルーが待ちわびていたシャルリュス男爵その人だったのだ!
そして、シャルリュス男爵は、語り手の最も愛する作家、ベルゴットの著作を手元から離さずに旅をするような男なのだった…。