プルースト

消え去ったアルベルチーヌ

酒井法子容疑者は失踪五日後、出頭、逮捕されたが、アルベルチーヌは語り手の前から失踪したまま、ついに帰らぬ人となってしまった。ドストエフスキーの新訳、『カラマーゾフの兄弟』で一躍有名になった光文社古典新訳文庫から、マルセル・プルーストの小説…

スワンの恋

そんなとき、スワンは彼女に憎しみを覚えた。「それにしても、あまりにばかだった」と彼は自分に言いきかせる。「自分で金を払って他人に快楽を得させているんだから。なにはともあれ、オデットも少しは気をつけてあまりつけ上がらない方がいい。もう金輪際…

感激の「リンク元」

「長いあいだ、私は夜早く床に就くのだった。」 本日、このような検索をしてくださった方(かた)がいた。http://search.yahoo.co.jp/bin/query?p=%c4%b9%a4%a4%a4%a2%a4%a4%a4%c0%a1%a2%bb%e4%a4%cf%cc%eb%c1%e1%a4%af%be%b2%a4%cb%bd%a2%a4%af%a4%ce%a4%c0…

id:tougyouさんの日記http://d.hatena.ne.jp/tougyou/20050813を拝読してぼくは愕然とした。ぼくが驚愕したのは以下の2点である。 1)ルキノ・ヴィスコンティ監督はトーマス・マンの「ブッデンブローク家の人々」を愛読していたこと。 2)ルキノ・ヴィスコ…

失われた時を求めて(10) 第5篇 囚われの女 2作者: マルセル・プルースト,鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 1999/09/17メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る……… ………とうとうある朝、語り手は決心する、そうだ、アルベルチ…

「マロニエの蕾」 水のような冷たい空気にひたっているブールヴァールのマロニエの木が、それでも几帳面な春の招待客として、もう装いをこらし、気落ちをすることもなく、抑えることのできない蕾をふくらませ、それを凍った塊(かたまり)のような姿に彫りあ…

マルセル・プルースト (ペンギン評伝双書)作者: エドマンドホワイト,Edmund White,田中裕介出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/11/28メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る巻末に「プルースト、カミングアウト」というエッセ…

今年の夏、プルーストの小説「失われた時を求めて」の第七篇「見出された時」の「ジュピアンの宿」のエピソードを読んでいたときに、ちょうど一年前の今頃、NHK TV で再放送されていたNHK特集「映像の世紀」の第二話「大量殺戮の完成塹壕の兵士たちは凄ま…

ジョン・レノン、ビートルズ、コルトレーンとマイルスと三日続けて自分の「失われた時を求めて」日記となってしまった。 いままた、プルーストの「失われた時を求めて」を読んでいるが、抄訳版三巻本でもなければ全訳本でもない。1992年に集英社から出版され…

川の流れ

川が流れております。 岸辺の草花を洗いながらたゆまず流れ続ける川をながめますと、 なにやら私の心まで洗い流される気がして参ります。 そうしていつしか思いおこされるのは私の子供の頃のことでございます。 私は川のほりで生まれ、川で遊び、川を眺めな…

「バスに乗り遅れて田舎の畦道を一人で歩いているうちに日が暮れちまってね、暗い坂道を心細く歩いていると……ポツンと一軒の農家が建っているんだ。……りんどうの花が庭いっぱいに咲いていてね。あけっ放した縁側から、灯りのついた茶の間で、家族が食事をし…

クリスマス・マチネー・コンサート

マチネーときけば二年前はハイティンク/コンセルトヘボウのクリスマス・マチネーを思い出していたのにいまでは「ゲルマント大公邸のマチネー(午後の集い)http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040628」を思い出すようになってしまっていた。

プルーストとワーグナー

プルーストの小説「失われた時を求めて」を最初に読んだときは、プルーストとワーグナーはそぐわないと思っていたが、こうして読み直してみると、けっこうプルーストとワーグナーは似ているところもあるのだなと思ったりしている。特にオデットがスワンに当…

見出された時

自分が書こうとしている小説と、自分に残されている命の時間と、ヴィクトル・ユゴーの詩を思い浮かべながら、考える語り手だった。 「草は生い茂り、子供らは死なねばならぬ。」 しかし、と語り手は想うのだった、人々があらゆる苦悩をなめつくして死んでこ…

仮装パーティ

給仕頭がやってきて、最初の曲が終わりましたので、図書室からお出になってサロンに入られても結構です、と語り手に告げたので、サロンに向かう語り手だったが、なおも無意思的記憶(レミニッセンス)のことを考え、このレミニッセンスの数が一番多くて巧み…

鈴木道彦教授の全訳版の帯にはこうある ゲルマント邸の午後の集い(マチネ)。 私は人々の上に刻印された「時」の啓示を見た ■時を超えて-2 敷石でバランスをくずした時に、特に自分では意識しなかったのに、あるいは意思しなかったのに、ヴェネツィアを思い…

木よ…-2

パリに帰った語り手を待ち受けていたものは、数々のパーティーの招待状であった。まだ語り手は完全に忘れられた存在にはなってはいなかった。 なかでも大事な二通の招待状のうちの一つはゲルマント大公邸で明日の午後開催される、午後の集い(マチネ)への招…

その後の展開

空爆が終わって帰宅すると、家政婦のフランソワーズが、語り手の留守中に、ゲルマント公爵家の希望の星、語り手の初恋の女性ジルベルトと結婚した、ロベール・ド・サン=ルーが、戦功十字章を置き忘れていかなかったか、捜しに来たという。それではやはりジ…

ジュピアンの宿-2

ホテルの待合には、兵士など若い男がたくさんいた。ほぼ満室状態のホテルだったが、語り手は運良く四十三号室をゲット出来た。喉が渇ききっていた語り手は部屋に何か飲み物を持ってきてください、とフロントに頼むと、部屋にはカシス(黒すぐり酒)が運ばれ…

鈴木道彦教授の全訳版「見出された時」の帯にはこうある 戦時下のパリ。シャルリュス男爵は、 禁断の愛に、夜ごと老残の身を捧げた ■ジュピアンの宿-1 1916年の空爆下のパリで、語り手はシャルリュス男爵と長い会話をする。 シャルリュス男爵は地位も名誉も…

見出された時

『日がな一日私が過ごしているいくらか鄙(ひな)びたその家は、せいぜい散歩の合間に昼寝をしたり、雨やどりに立ち寄ったりする場所にしか見えなかった。…』 プルーストの小説、「失われた時を求めて」の最終、第七篇、「見出された時」はこのような書き出…

「見出された時」の始めに

ジルベルとアルベル、ルベルの前に付くGとAの違いだけで、似ているといえば似ている、ヴェネツィアで受け取った電報は語り手の初恋の女性、ジルベルトからのものだった。 スワンの死後、オデットhttp://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040901は昔の愛人、フォルシ…

ヴェネツィアにてー忘却の法則-2

母とともに、念願のヴェネチアへの旅を実現し、ゴンドラに乗ったり、散歩をしたりしてヴェネチア滞在を楽しんでいた語り手だったが、ある晩、思いがけない事態が起こって、アルベルチーヌへの愛がよみがえったかのように思われた。 それは、電報局員が、不在…

ヴェネツィアにてー忘却の法則-1

時々、夜見る夢のなかに、アルベルチーヌが姿を現すことがあった。 夢のなかのアルベルチーヌは、語り手の愛する作曲家、ヴァントゥイュhttp://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040824のお嬢さんとの同性愛を否定し、「自分はなんにも悪いことなどしていない、ただ…

男と女の出逢いのパターンの一つとして、好きになったのはどちらが先だったのか、という問題がある。 映画「月の輝く夜に」http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20031202で、母は娘にこういう、「好かれて結婚しなさい、そのほうが楽だから…」、しかしロレッタ(…