シューベルトは「若禿げ」に悩むのだった

森雅裕さんの『モーツァルトは子守唄を歌わない』http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040727を読んでから、時々、「眼鏡を掛けた小肥りの少年」シューベルト君が目の前を飛び交ってならない。で、ギュンター・ヴァント/NDRの、2000年10月のオペラシティのコンサート映像を再度、観る。う〜ん、何度観て聴いても素晴しい『未完成』。
『未完成』が未完で終わったことに関しては伝説がある。例の、映画『未完成交響曲』(1933)に描かれた、『我が恋の終わらざるがごとく、この曲も永遠に終わらじ』である。
シューベルトエステルハージ侯爵家の夜会で『未完成』をピアノ演奏するのだが、第三楽章に入った途端声をあげた侯爵家の令嬢カロリーネのために演奏は中断されるが、それが縁となってシューベルトは令嬢の音楽教師となる。二人の間には愛が芽生えるが、結局、彼女は他の貴族の男性と結婚してしまう。結婚式の当日、シューベルトは再び『未完成』を演奏するが彼女はまた同じ箇所で慟哭してしまう。そこで、シューベルトは彼女への想いを永遠に留めるために『未完成』を未完のままにする。
これは、映画のお話しであって、現実ではない。現実はエステルハージ家の小間使いに「梅毒」を貰ってしまったのだった。シューベルト21歳の時である。25歳の頃には梅毒性脱毛で、頭部の毛が全滅。28歳頃からは脳梅毒へと進行し、31歳でその生涯を終える。ベートーヴェンが亡くなった翌年のことだった。