HMV レビュー

フルトヴェングラー / 『トリスタンとイゾルデ
オバート=ソーンによる初期盤トランスファー
1952年録音。ふたりの偉大なワグネリアンフルトヴェングラーフラグスタートが残した不朽の名盤を、SP盤復刻の名手として知られるオーバート=ソーンが初期LPからCD化。
この名人の板起こしは、クナ1951年の《パルジファル》や、カラス&サバタの《トスカ》の大成功で既にお馴染みですが、今回も、特に第2幕の二重唱の大詰め(CD2)など音の密集したパワーと歌唱の明瞭度が秀抜で、フラグスタートのイゾルデ役は崇高な美と力にさらに磨きがかかり、昔から評価の芳しくないズートハウスのトリスタン役も見事なまでの雄々しさをその声に感じさせ、二重唱の絶頂に飛び込んでくるフィッシャー=ディースカウ(クルヴェナール役)の若々しい声の質感も素晴らしく、聴きやすさ第一主義をとった本家EMI盤とはひと味違う力強い整音が聴きものです。
オバート=ソーンによるプロデューサー・ノート
今回の復刻盤は、主としてドイツ・プレスのLP2セットから板起こししたものです。数箇所の補修のために、アメリカ・プレスの2セットも利用しました。時おり、わずかな欠損や、オリジナルのマスター・テープに固有のものである、音量レベルの過負荷に起因する歪みも存在しています。高音域を保全するために、ノイズ・リダクションの過剰使用は控えておきました。