ある出会い(シャルリュスとモレルー1)-3

飛んで来るようにしてやってきたシャルリュス男爵はモレルに、『今夜、私は少しばかり音楽を聞きたいので、君に500フラン、払おう!』と申し出るのだった。そして二人は親密そうに話し始め、男爵は語り手に『じゃ君、いずれまた』と言って、語り手に『早く消えろ!』と暗に指示するのだった。
え?シャルリュス男爵は今からパリに帰ろうっていうのに、『今夜、音楽を聞きたい』だって?
どこで、語り手の従僕の息子のバイオリニスト、若くて美貌のモレルを知ったというのか?
ん?そうか、そうなんだ。
語り手は瞬時に理解するのだった、シャルリュス男爵はこの日この時、初めてモレルと出逢ったのだ。男爵は竪琴の襟章のついた軍服をピシッと着こなすモレルにすっかり目がくらむと同時におじけづき、胸をときめかせながら、語り手を使って、モレルを“ナンパ”しようとしたのだということに。
パリ行きの汽車はシャルリュス男爵を乗せずに出発した、そしてその夜、シャルリュス男爵とモレルがどういうことになったかは分からずじまいだった。