ある出会い(シャルリュスとモレルー1)-2

パリの夜会(ソワレ)で会うシャルリュス男爵は不動の体をピタリとフィットした燕尾服に包み、エスプリ溢れる会話を駆使しているから、語り手にはシャルリュス男爵がどれくらい年寄りなのか分からなかったが、ドンシェール近郊の軽便(トラム)の小駅で、昼の光のもとで見るシャルリュス男爵は突き出た腹と、大きな尻をライトカラーの旅行用スーツに包んで、染めた口ひげの黒檀のような色は半白の髪の毛と好対照をなしていた。
男爵は語り手に、自分の親戚に当る一人の若い軍人を呼んできてくれないかと頼むのだったが、その頼みを聞き入れて、線路の反対側に停車している車両の、その若い軍人のところに行ってみれば、その若い軍人は語り手の叔父の従僕の息子のモレルだった。懐かしさのあまりモレルと話を交わそうとした語り手だったが、モレルは「気取り屋」になっていた。語り手を見かけることはモレルに彼の父親の職業(従僕)を思い出させるからだった。
そんな時突然、語り手は、会話を交わしている語り手とモレルの方(ほう)に飛んでくるシャルリュス男爵を見た。
シャルリュス男爵は待ちきれなかったのだ。