ラインの川底に眠る指輪と妻の指に残る指輪

父親の猛反対にもめげず無事ゴールインしたシューマンとクララであったが、二人を待っていたのは苛酷な運命だった、シューマンが精神に異常を来たしたのである。
婚約時代にシューマンは、クララに宛てた手紙に『…僕は夢をみた。僕は深い川のほとりを歩いていた。その時ふとした思いつきで、指輪を川に投げ込んだ。するとその後を追ってたまらなく川に飛びこみたい気持ちになった。指輪というものはみかけだけ二人を結びつけているのではなくて二人の一生を結びつけているのだ。』と書いているのだった。
この手紙の十数年後、シューマンは『愛するクララ、僕は結婚指輪をライン川に投げ入れます。君もそうして下さい。そうすれば二つの指輪はひとつに結ばれるのです。』とのメモを残してライン川に身を投げたのだった。
クララ・シューマンは天寿を全うする日まで、決してその指から指輪をはずすことはなかった。