スワン家のほうへ(2)


夜、家の前の大きなマロニエの下で、私たちが鉄製のテーブルを囲んで座っていると、庭のはずれから聞こえてくる呼び鈴が、溢れんばかりにけたたましく、鉄分をふくんだ、尽きることのない冷んやりする音をひびかせる場合、その降り注ぐ音をうるさがるのは「鳴らさずに」入ろうとしてうっかり作動させてしまった家人だとわかるのだが、それとは違って、チリン、チリンと二度、おずおずとした楕円形の黄金(きん)の音色が響くと、来客用の小さな鈴の音だとわかり、皆はすぐに「お客さんだ、いったいだれだろう」と顔を見合わせ、それでいてスワン氏でしかありえないのは百も承知なのだ。