アニサキス蕁麻疹
Rさんは中国、大連市からの留学生だ。
昨日はいつものように友人と行きつけの料理店で食べ慣れた昼食を摂った。
その後、吐き気や下痢など特になんの問題もなく、午後をいつものように過ごし、夕刻、六時頃一人で帰宅した。
帰宅後、二、三十分も経たないうちに体全体がものすごく痒くなり、みるみる全身に膨隆疹が出現した。
夕食の時間が過ぎても食欲は無く、結局この日は夕食は摂らなかった。
その後、痒み、膨隆疹は二、三時間をピークに軽快し始め、午後11時頃には小康状態となり、眠りに付いた。
夜半、小用のため起床した時には、ややふらついたものの、吐き気、胃痛、下痢などの消化器症状はまったく無かったという。
しかし翌日も、からだの痒み、膨隆疹は完全には消失しないため、受診された。
症状の始まりと経過から、食餌性の急性蕁麻疹を疑い、サバやサンマなどの背の青い魚のアレルギーはないかと訊ねたところ、まったく無いとのことだったが、食品表示義務セット5+2の七種類(卵白、ミルク、小麦、ソバ、ピーナッツ+エビ、カニ)に対するアレルギー抗体の有無、それに念のためアニサキス抗体を検査してみた。
アニサキスというのは、魚介類に寄生する寄生虫で、ヒトには激烈な消化器症状(アニサキス症)を引き起こすことがあり、蕁麻疹などのアレルギー症状を起こすこともある。
アニサキス・アレルギーのひとは、サバに対するアレルギーは無いのにたまたま運悪く、アニサキスが寄生しているサバを食べると、蕁麻疹を起こしてしまうのだ。
そのときの体調でサバを食べても蕁麻疹が起きないときもあるのではなくて、アニサキスが寄生していないサバだったら大丈夫というわけだ。
さて、Rさんであるが、卵白、ミルク、小麦、ソバ、ピーナッツ、エビ、カニの七品目に対するアレルギーは認められず、アニサキスに対してだけ、アレルギーが陽性だった。
アニサキスが寄生していることの多い食品は、サバとイカらしい。
食餌との関連が疑われる蕁麻疹で悩んでおられる方は一度、アニサキスに対するアレルギー抗体の有無をチェックしておかれると良いと思う。