バイエルンのドン・ジョヴァンニ
1月25日に刊行された「パウル・クレー 絵画のたくらみ」を読む。
巻頭に作家、いしいしんじ氏の「オルフェウスの庭で」と題するエッセーがあり、
一読、あ、こんな感じ方もあるんだなー、と唸ってしまった。
いしいさんはこう書いておられる。
それは、クレーの絵「オルフェウスの庭」が音楽で、私のからだにそのこだまが、えんえん鳴り響いていたためである。「音楽を見る」こと、「絵に耳をすませる」こと。パウル・クレーは芸術家として、そのことをはじめから終わりまで目ざしていたように思うが、「オルフェウスの庭」は、その目的の、もっとも純度の高い達成だという気がする。
パウル・クレーはもともとヴァイオリニストになろうか、画家になろうかと悩んだくらいの人だから、その絵画作品に音楽が色濃く漂うのも当然なのだろう。
クレー自身もこう書いている。
ドン・ジュアンの五重奏は、トリスタンの叙事詩的な動きにもまして、私たちの心に迫る。モーツァルトとバッハは、19世紀の音楽にもまして現代に近い。(1917年7月の「クレーの日記」より)
ぼくは「バイエルンのドン・ジョヴァンニ」を観ると、条件反射てきに、モーツアルトのクラリネット五重奏曲を聴きたくなる。
- 作者: 前田富士男,宮下誠,いしいしんじ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/01/24
- メディア: 単行本
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