2006年の終わりにTxxさんのことを想う

mii06252006-12-24

2006年も残り少なくなった。

今年の最後にあたってTxxさんのことを書き記(しる)さないわけにはいかない。

ぼくがウェッブで日記を書くようになったのは2002年の2月からだった。

いまではほとんどちりぢりばらばらになってしまったライコスダイアリーというところで日記を書くようになった。

そしてその年の暮れにTxxさんの日記に出会った。

その記事のことはいまでも良く憶えている。

それは「電車のなかでマルクスの「共産党宣言」をブックカバー無しで読むことについて」という記事だった。

ちょうどその頃、村上春樹さんの小説「海辺のカフカ」が出版された。この「海辺のカフカ」を契機にTxxさんと親しくなれたと思う。二人とも村上春樹さんの小説が好きだったからだ。

明けて2003年の2月、いまになって振り返ってみれば運命の出会いと呼んでもいいような大事な出会いをした。鈴木道彦教授の新書「プルーストを読む」を偶然、読んだのである。

この読書をきっかけにぼくは2003年の7月から今では「きっこの日記」で有名になった「さるさる日記」というところで、「失われた時を求めて」の読書感想日記を書くようになった。これは一年以上書き続けた。

一方、TxxさんはNGO活動のかたわら受験した選抜試験に合格し、念願かなって渡英することになった。渡英したのちもTxxさんは海外生活日記をウェッブに書き続け、ぼくは熱心に読み、時々コメントした。

2004年の夏にプルーストの「失われた時を求めて」を読了したあと、なぜかぼくはワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」が聴きたくなり、2004年の秋から「トリスタンとイゾルデ」ばかり聴いてきた。この「トリスタンとイゾルデ」熱は2005年、バイロイトでの大植英次さんのライブで頂点に達し、ネットの畏友ぱきゅんさんのご好意で鑑賞することが出来たバーンスタインの映像のあまりの素晴らしさに、ついに燃え尽きた。

ゾルデはアイルランドの王女である。ではアイルランドってどんなところだ?

それを知るにはアイルランド人の書いたアイルランドだらけの小説を読めば良い。そう考えたぼくはジェイムズ・ジョイスの小説「ユリシーズ」を読み始めた。

2005年5月にマーテロ塔の朝から始まった物語は2005年の12月に、モリーの独白で終わった。

そしてそのころ、Txxさんも英国から帰国した。

2006年は想定外の事件で幕を開けた。まず英国から帰国したばかりのTxxさんが5月の就職試験に向かって猛勉強を開始したのだ。まだ時差ぼけも取れていないはずなのに…。これはすごい努力の人だとただただ感心した。と思ったらその翌週ホリエモンが逮捕された。

ことは6月25日に起こった。一次試験に合格し、二次試験が終わったばかりのTxxさんが突如としてブログを全て削除したのだ。一夜にしてインターネットの世界からTxxさんは消えてしまった。

どうやらブログを全削除した原因は入社試験に関するトラブルらしいのだが、いま一歩、判然としない。そしてそれ以来、Txxさんからは何の連絡もない。

けれどもあと3ケ月もすれば春だ。

来年こそはTxxさんにも桜咲く春がやってくるだろう。

ぼくはTxxさんに桜の咲き乱れる美しい春が訪れることを心から願っている。

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

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