シナリオ「失われた時を求めて」第1回

マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」第一篇「スワン家の方へ」は完全にカットされて、第二篇「花咲く乙女たちのかげに」のちょうど1/2あたりから、スワンとオデットの恋の結果として生まれたスワンの一人娘である美少女ジルベルトとの初恋に破れた語り手が祖母と一緒に、ノルマンディー、海のバルベックへと夏の保養の旅に向かう列車のシーンから、ヴィスコンティ監督の映画「失われた時を求めて」は始まる。

シーン1:田園。屋外。昼。夏。

バルベックに向かう小さな汽車が、陽の照った田園の中を、進んで行く。黒煙を高く棚引かせながら、ゆっくりと--苦しそうに--進む、この小さな汽車以外には、生きものの気配は全くない。

シナリオ 失われた時を求めて (ちくま文庫)

シナリオ 失われた時を求めて (ちくま文庫)