暁を彩る牛乳売りの娘*1

mii06252006-01-02


かつてメゼグリーズのほうやルーサンヴィルの森のなかをひとりでさまよっていたとき、突然あらわれてこないものかとあんなに私がねがったあの農家の娘よりもひときわまさって、ある土地の生んだ人間にその土地独特の魅力が感じられるとすれば、このときその小屋から出てきて、朝日が斜に照らしている山道を、牛乳のジャーをさげながら駅のほうへくるのを私が見た背の高い娘は、まさにそれであったにちがいない。その顔は朝日にぱっと映え、空よりもばら色だった。私はその娘をまえにして、われわれが美と幸福との意識をあらたにするたびに心によみがえるあの生きたいという希望をふたたび感じた。

失われた時を求めて〈2 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 1 (ちくま文庫)

失われた時を求めて〈2 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 1 (ちくま文庫)

http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20050205