初恋/再会篇

■♪ 有楽町で逢いましょう♪■

フランク永井さんの渋い声で歌われた「有楽町で逢いましょう」、この、いまはビック・カメラになっている、有楽町そごうの1階で、16才の時に出会い、8年間交際し、別れたyと、約20年後の夏、偶然、再会した。頂き物の商品券があったので夏の靴下を買って店を出ようとすると、中年のおばさんがぼくを見て、ニコニコしているではないか!会釈をして通り過ぎようとすると、すれ違いざま、その女性が『元気?』と言った。その声を聴いた瞬間、時間は空間を飛び越えてぼくは23才のぼくに戻った。yは、あなたは昔と変わらない、すぐ分かった、と言っていた。でもぼくはyの声を聴いて、初めてyだと分かった。

ぼくの愛したyはぼくの心のなかでは、別れた時のそのままで、年をとってはいなかったのだ。

そして、その日を境に、ぼくのみる夢のなかにyが出てくることはなくなった。

プルーストの小説「失われた時を求めて」を2年間読んで(いまも読んでいるが)、ぼくはyのことを書いたのではなくてyを愛した自分のことを書いたのだと思うようになった。

ひとは愛する異性の瞳をみつめている。しかしそれは相手の瞳に映る孤独な自分自身をみつめているのだ、と思った。

http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040915