ルードウィヒ・B (潮ライブラリー)

ルードウィヒ・B (潮ライブラリー)

オットー・クレンペラーの「フィデリオ」を聴いていたら思い出した、手塚治虫さんの絶筆のことを。
それは「ルードウィヒ・B」という作品(潮出版社1989年8月10日発行)で、本編の最後のページに
“「コミックトム」に、1987年6月号より、1989年2月号まで連載されました。
手塚治虫氏が1989年2月9日に逝去され、「ルードウィヒ・B」は未完の絶筆となりました。”とある。
本編のほうはベートーヴェンの生誕前から「月光ソナタ」の作曲までが描かれていて、次のページから手塚治虫さんの自筆と写真で、「ベートーヴェンの部屋」というエッセイが載っている。そのエッセイには、『ベートーヴェンの引っ越し好きは有名だが、僕も結婚前に8回、結婚後にも4回の引っ越しをしている、そのなかにはあの有名なトキワ荘の1年半も含まれている』と書かれてあった。
巻末に本は、萩尾望都さんによる “歓喜”という自己表現を求めてー未完の「ルードウィヒ・B」へー と題された後書が載っている。
モーツアルトでもなく、ましてやワーグナーなどではなく、ベートーヴェンこそは手塚治虫さんがその最後に取り組むのに、まさに相応しい人物だった、と思った。