1951年、第二次世界大戦後、7年ぶりに再開されたバイロイト祝祭歌劇場で、ワーグナーのオペラ(楽劇)「ニーベルングの指環」を指揮したのは、しかしフルトヴェングラーではなかった。指揮したのはハンス・クナッパーツブッシュヘルベルト・フォン・カラヤンだった。
「けっしておじいちゃんと呼んではいけないよ。パパのお父さんって呼びなさい」としつこく祖父ワーグナーから言われ続けていたワーグナーの孫、ヴィーラント・ワーグナーが演出を担当した。
ワーグナーから「けっして“おじいちゃん”と呼んてはいけない」と幼い頃言われ続けて育ったヴィーラントの演出は、ナチス・ドイツとの決別を意図してか、祖父ワーグナーの楽劇を一種の象徴劇として、舞台上の現象の背後にあるものに注意を向けさせて、ナチズムを超えた国際性を目指すものだった。