社交界の輪舞-1

ゲルマント公爵夫妻と共にゲルマント大公夫人の大晩餐会から帰った語り手は、海のアルベルチーヌの訪れを待つあいだ、すっぽかされそうになったアルベルチーヌへの恨みも手伝って、初恋の女性、あのジルベルト・スワン嬢に宛てて、手紙を書いていたように、アルベルチーヌに思わせようとするのだったが、実際にアルベルチーヌが接吻のあと、あっさりと語り手のもとから去っていってしまうと語り手は、病気で余命いくばくもないスワンに約束した、「ジルベルトに手紙を書く」ことを思い出し、その手紙を今こそ本当に書こうと思いながら、自分が経験し、体験してきた社交界のことを改めて思うのだった。
永遠に不変のように思われた、超一流の社交界だったが、社交界といえども例外では無く、不動の静止状態を呈しているわけにはいかなかった。
あのスワンと高級娼婦オデットの出会いの場となったヴェルデュラン夫人http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040901のサロンは、バレエ・リュス(ロシア・バレエ)のパリへの登場とともに、彼女があれほど待ち望んでいた成功への確実な第一歩を歩み出したのだったし、一方、スワン夫人は夫のユダヤ系フランス人スワンとは反対に、反ユダヤ主義を標榜して、さらにはオデットのサロンのお馴染みの作家、ベルゴットがフランスの芥川賞であるゴンクール賞を受賞して人気作家となったことによって、これまた着実に成功への階段を、一歩、また一歩と昇っていくのだった。