優雅な不倫

R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」 [DVD]

秋晴れの日曜の午後だ。
いつもそこには夏が燃えているコルトレーンの炎のジャズを聴いた耳には、今日のような日にはリヒヤルト・シュトラウスのオペラ、『ばらの騎士』が最もふさわいいと思う。
黄昏れのウィーン、秋の終わり、元帥夫人とその愛人の美貌の青年伯爵、元帥夫人の親戚筋の中年おやじ貴族（彼には20歳くらいの隠し子もいる）の田舎男爵と、成り上がり貴族の美貌の若い娘との婚約、すったもんだのあげく、美貌の若者同士が結ばれ、おやじ男爵と元帥夫人は若者達の前から、舞台を去っていく。
第一幕の元帥夫人のモノローグの素晴らしさ。時よ、止まれ！貴女は今も充分に美しい。でも時は無常にも容赦なく過ぎていく。そして第三幕の重唱の美しさは何に譬えれば良いのだろう？
カラヤンは40代と70代に、二度このオペラを映像化している。このカラヤンの姿こそが、時が過ぎる、という残酷さを余すところなく曝け出していると思う。
2002/11/10 15:22:06