『モロッコ革の本』の著者、栃折久美子さんの『森有正先生のこと』(筑摩書房)を読んで、衛星第二の「パリ五次元紀行・森有正」を観て、森有正のバッハのオルガン演奏CDを聴いたりしているうちに、そういえば森有正先生がプルーストについて書いていらしたのを思い出した。
「私はまた、プルーストの文章が好きで、あの綿々とした文章を一つ一つ読んでいきます。このたいした作家の場合、突然そこに閃きのように、あるいは稲妻のように、その深い直感が出てくるのです。それが出てくると全体に生命が交って、それまで延々ときたものが、突如として立体的に結晶する。ほかの作家には見られないすばらしいものです。それは、突然一つの直感が意識のなかからわき出してくるのです。そうすると全体が生き生きとしてきて、それからまたずっと普通に色あせて、その流れが何百ページと続いて、またそこに一つの稲妻が光る。プルーストの、たとえば記憶の問題にしても、思想の問題にしても、あるいは死の問題にしても、そういう形で出てくる。つまり単なる観念としてではなくて、プルーストの全存在を揺り動かす、じつに現実的なものとなって、彼に把握されて、それが文章にそのまま反映されてくるのです。私はそこから、じつにたくさんのことを学びました。」(講談社現代新書より)
う〜ん、稲妻(エクレール)か。