ジャコメッティとともに

矢内原伊作著「ジャコメッティとともに」、筑摩書房刊、を再読。裏表紙を見ると、昭和44年6月20日発行とある。この本が、自分が感動して以来、手元にずう〜っと残っている愛蔵本の第一のものだ。
ま、それはそれとして、30年後の今日、再読して想うことは、“質の大切さ”である、現代の我々はもうそのことをほとんど考えることさえないまま“量の時代”を生きてきたのではないだろうか?芥川賞直木賞ショパンコンクール優勝等の名誉と肩書きを与えることによって質を保証し、その後は量を追求するという、経済至上主義があまりにも当然と思われてきた。ジャコメッティのように自己の芸術の質をたかめる、充実させることにのみ集中する真摯な生き方をもう一度、己の心に刻みこまなければいけないと思う。