スワン家のほうへ(5)

サン=チレール教会の鐘塔は、遠くからそれとわかり、コンブレーの町がまだ見えないうちから地平線上に忘れがたい姿を刻みつけていた。復活祭の週に私たちをパリから運んできた汽車の窓から見ていると、鐘塔が空に描かれた雲の畑をつぎつぎと越え、小さな鉄の風見鶏をくるくると四方八方に飛びまわらせる。

プルーストの世界を読む (岩波セミナーブックス 92)

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