ベートーヴェン交響曲第一番

母の状態が悪化したときに、無意識に手を伸ばして棚から取り出し、プレーヤーに架けたのは図らずもアルトゥーロ・トスカニーニが手兵のNBCオーケストラを振ったものではなく、BBCオーケストラを振ったNAXOS盤だった。
数あるベートーヴェン交響曲第一番の録音音源の中で、ぼくが聴いたものは１０種類前後に過ぎないが、このトスカニーニ/BBC盤は一聴、心を捕らえられた演奏だった。
作曲家の意図と、指揮者の情熱と、演奏者の集中と、この三者の全てが一致したときに初めて、意識は高揚し、異常な熱気を帯びた、歴史に残るような名演が生まれる、とぼくは思うのだが、青春の息吹に満ち溢れたベートーヴェンの一番にはこのトスカニーニ/BBC盤が最も相応しいと思う。

Beethoven: Symphony No.1 & 4