失われた時を求めて

mii06252008-02-10


 眠れない夜、私がよく思い浮かべるいくつかの部屋の中で、バルベックの「海のグランドホテル」の部屋ほどあのコンブレーの部屋とかけ離れたものはなく、粉をまぶしたようにコンブレーの部屋を覆っていた空気が、ざらついた、花粉だらけの、食べられそうでしかも信心深い空気であるのに対して、この「海のグランドホテル」の壁にはエナメル塗料がかけられており、ちょうどプールの内側のつるつるした壁が青い水をたたえているように、澄んだ、空色の、潮気を含んだ空気をたたえていた。