ゲルマント大公とゲルマン民族

初めて「失われた時を求めて」を読んだときから、不思議だった。なぜ王家にも優る家系図を誇るフランス貴族中の貴族の名前を、ブイヨン大公とかクールボワジエ大公とか、いかにもフランス人っぽい名前にせずに、ゲルマン民族を、まるでドイツ人を思わせるような名前、ゲルマント大公と名付けたのかが疑問だった。
この疑問は工藤庸子教授の「ヨーロッパ文明批評序説」を読んで氷解した。
工藤教授は略以下のように述べておられる。

ユダヤ系の金融界につらなる大ブルジョワで、社交界の寵児でもあるスワンに対し、千年にわたる封建制を血のなかにもっている、同族結婚を繰り返す「純血のゲルマン」だからゲルマント。

セム対アーリアの典型だったのだ。ヒンズー的な階級秩序の崩壊は、昨年のサルコジ大統領誕生のフランスを予兆していたのではないか…。

ヨーロッパ文明批判序説―植民地・共和国・オリエンタリズム

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