最終章

ジェイムズ・ジョイスの小説「ユリシーズ」の最終章を読み終えて感じたことは〝翌朝、ブルームは目覚めたときに何を思うか〟ということだった。ぼくには朝ベッドで目覚めて、まだ眠っている愛妻モリーを見ているブルームの姿がありありと見えた。そしてこれはプルーストの小説「失われた時を求めて」の最終章を読み終えたときに感じたこととまったく同じだった。ぼくは〝夜中、白木の大机に向かって懸命に出筆する語り手の姿〟を見たのだった。

抄訳版 失われた時を求めて 3 (集英社文庫)

抄訳版 失われた時を求めて 3 (集英社文庫)