ラジオの時代
残念ながら1908年にニューヨーク、メトロポリタン歌劇場でグスタフ・マーラーが指揮したワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」はCD化されていないが、そのマーラーから直接、指揮法を教わったボダンツキーが指揮した「トリスタンとイゾルデ」の舞台はCD化され、現在でも充分に楽しむことが出来る。マーラーの指揮がCD化されず、なぜボダンツキーの指揮がCD化されたのか?
それはラジオの出現による。
1930年代から(2005年のいまにいたるまで)ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場の毎週土曜のマチネー公演が全米にラジオ中継されるようになったので、そのラジオ放送の音の記録を2005年のいまでも鮮明な音で楽しむことが出来るのだ。ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」にもプルーストの「失われた時を求めて」にもラジオは登場しない。しかしユダヤ人は登場する。知的ユダヤ人の同時代の代表的存在として、ユダヤ人グスタフ・マーラーはジョイス、プルーストに影響を与えたのではないだろうか。
そして、マーラーが亡くなった9年後にラジオが出現し、映画も始まった。ぼくはジョイス、プルーストの歩く姿を見たことはないがレフ・トルストイの歩く姿の映像を見たことがあり、それはDVD化されている。