初恋／思い出篇

初恋／思い出篇

y とのその後は順調だった。ほぼ毎日長電話をした。どっちが先に電話を切るか、そんなことが大事なことに思えた幼い恋だったが、それはそれなりにそのときの二人にとってはせつないことだった。

そして、出逢った三ヵ月後、ビートルズがやってきた。

Past Masters 1

ぼくはその頃、その頃でいう「モダンジャズ」ばかりを聴いていた。ビートルズももちろん好きでラジオで聴いていたが、レコードを買うほどではなかった。y はシャルル・アズナブールが好きだった。そんなy がビートルズの来日公演に行こうと言い出した。y は行けば二人の一生の記念、思い出になるからと言った。そして金曜日の午後のチケットを二枚ゲットしてきた。y はライオン歯磨きの抽選に当たったなどと言っていたが疑わしい。y の父は何棟かのビル経営をしている大金持ちだったから、y はお父さんのコネを使ったのではないかと今では思っている。でもぼくは追及はしなかった。

ふたりは高校をサボってビートルズ来日公演を見に、日本武道館へ行った。