ダイアル電話と携帯電話

昔、ダイアルを廻してかける電話機というものがあった。アル・フレッド・ヒッチコック監督作品で「ダイアルMを廻せ」という映画もあった。そのころは電話をしていて怒られたりすると思わず電話機に向かって頭を下げたりすることもあった。そのころの電話機で聞く声には温度感があった。また独特の湿り感を聞きとることも出来た。プッシュフォン、携帯と電話が進歩するに連れて電話機から聞こえてくる声に温度感、湿り気、しっとりとした潤いが失われてきたように思う。このオーバート=ソーン盤には失われたその温度感、湿り感がある。マリア・カラスの声が生きている、ぼくはそう感じる。