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1973年10月、ウィーン国立歌劇場ライブ。
指揮はカルロス・クライバー
ゾルデ:カタリーナ・リゲンツァ
トリスタン:ハンス・ホップ
演奏はウィーン・フィルハーモニー。
1960年代、シュトゥットガルトの歌劇場、チュ−リッヒ歌劇場、バイエルン国立歌劇場等でタクトを振っていたクライバーは1973年2月、ドイツ・グラモフォンウェーバーの歌劇「魔弾の射手」を録音してレコーディング・デビューし、同年10月、ワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」を指揮してウィーン国立歌劇場にデビューした。
この盤はその時の演奏の記録。
43歳のクライバー、入魂の名演。第二幕の冒頭、拍手の鳴り止む前から、パッと指揮棒を振り下ろすさまはまさにクライバーらしさに溢れている。終演後の大拍手とブラボーの大歓声も収録されていて、このウィーン・デビューが大成功だったことを伝えている。

1975年7月、バイロイト音楽祭ライブ。
指揮はカルロス・クライバー
ゾルデ:カタリーナ・リゲンツァ
トリスタン:ヘルゲ・ブリリオート
演奏はバイロイト祝祭管弦楽団
1973年の秋にウィーン国立歌劇場にデビューしたカルロス・クライバーは翌年の夏、さっそくバイロイトに招聘され、「トリスタン」を演奏する。
クライバーは74年、75年、76年と三年連続してバイロイト音楽祭で「トリスタンとイゾルデ」を指揮した。
ゾルデは三年連続してリゲンツァが歌い、トリスタンは最初の二年がブリリオート、76年がスバス・ヴェンコフだった。
ぼくの持っている盤は75年の記録。
演奏は73年のウィーンでのホップがブリリオートに替わり、クルヴェナールがナイトリンガーからマッキンタイアーに替わったぶんだけ、より新しくなり、燃焼度も高く、まさに愛に燃え尽きるイゾルデ姫とクライバーの歌が聴ける、鳥肌の立つ演奏。

1982年2月、スタジオ録音盤。
指揮はカルロス・クライバー
ゾルデ:マーガレット・プライス
トリスタン:ルネ・コロ
演奏はドレスデン・シュターツ・カペレ。
1973年秋のウィーン国立歌劇場、翌年から三年連続でのバイロイトでの演奏、そしてこのドイツ・グラモフォンへの録音と、カルロス・クライバーと「トリスタン」との関係は続いてゆくのだった。
73年、75年、82年と年を追ってクライバーの「トリスタンとイゾルデ」を聴いていくと、なぜクライバーがマーガレット・プライスを起用したかが分かるような気がする。
いずれにしても、この盤は徹底した、「トリスタンとイゾルデ・ア・ラ・クライバー」、「クライバー風味のトリスタンとイゾルデ」だから、クライバー・ファンの方はどうぞ、心行くまで堪能してくださいという盤だと思う。