途中の対談

mii: ccoさん、お誕生日おめでとうございます。

cco: 有難うございます。今日で私も四捨五入すると●台になってしまいました。

mii: それにしても地震、お母さんのところ無事で良かったですね。

cco: はい、母のところは上越ですから…。中越の被災地の皆様には心からお見舞い申し上げます。
さて、「トリスタンとイゾルデ」聴きっ記ももう10日以上になりましたね〜。いいかげん飽きてきました、な〜んちゃって。

mii: おっおっ、そう仰らずに、もうちょっとですからお付き合いください。

coo: そうそう、クライバーといえば、わたしはグラモフォンのスタジオ録音盤しか聴いたことが無いのですが、あれはクライバーの中ではあまり好きになれない演奏でしたですよ。

mii: ん、あのスタジオ録音盤はちょっと録音が特殊ですからね。昨日のウィーン・ライブは「ラインの黄金」のアルベリッヒがクルベナールを歌っていて、『おぬし、役者やのう!』という感じで、そんなナイトリンガーの役者ぶりの歌唱に、喜んでクライバーが歌伴していくところが実にいい。まさにオペラ指揮者クライバー、という印象です。

cco: わたくしはクライバーの「椿姫」、ことにコトルバスさんが好きなのですが…。

mii: クライバーは「トリスタン」ではカテリーナ・リゲンツァのイゾルデと4年も一緒に仕事をしています。

coo:わたくしもmiiさんの昨日の日記の「ウィーン・デビュー盤」、聴いてみたくなりました。

mii: ぼくはこういうライブ盤が好きなのです。くしゃみやせきが演奏の良いところで録音されているヤツ。いまでは数日間のライブを収録して、くしゃみやせきはカットしちゃう。

cco: 良いとこ録りして経費節減。

mii: そうそう。「良い演奏しました、ジャンジャン」、それでお仕舞い。作られたライブ。そんなの面白くもなんともない。

cco: やはりライブは一発録りのほうが良い。

mii: そうそう。八代亜紀さんじゃないけれど、お燗はぬるめのほうがいい、ライブは生のほうがいい。ccoさんはご存知ないかも知れないけれどフルトヴェングラーの“足音附き”ってご存知ですか?

cco: いえ、知りません。それって何ですか?

mii: 第二次世界大戦で中断されていたワーグナーバイロイト音楽祭が再開された時、名指揮者フルトヴェングラーベートーヴェンの第九を指揮したのですが、そのとき指揮台に歩いてくるフルトヴェングラーの足音がオリジナルでは録音されている、でも演奏の音を良くしようとしてリマスタリングすると彼の足音が消えてしまう。

coo: 良くなる演奏の音と消えていく足音。

mii: そう。なかなか記録をどういう型で残すか、難しい問題です。

coo: わかりました。わたしももう少し辛抱してmiiさんの「トリスタンとイゾルデ」覚書を読んでみます。

mii: 今日は雨で寒い中、有難うございました。

     10月30日 六本木「たんや又兵衛」にて