2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴェネツィアにてー忘却の法則-1

時々、夜見る夢のなかに、アルベルチーヌが姿を現すことがあった。 夢のなかのアルベルチーヌは、語り手の愛する作曲家、ヴァントゥイュhttp://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040824のお嬢さんとの同性愛を否定し、「自分はなんにも悪いことなどしていない、ただ…

エメの手紙

海のバルベック、グランドホテルの給仕長、エメに亡くなった恋人アルベルチーヌがレズビアンだったかどうか、調べてくれるよう依頼した語り手だったが、待ちに待ったそのエメからの手紙を読んだとたん、語り手は激しく落ち込むのだった。 アルベルチーヌがレ…

アルベルチーヌの死-3

行きつ戻りつ、戻りつ行きつ、アルベルチーヌのことを想う語り手だった。 夏の巴里の異常なまでに長い夕方、なんと日がゆっくりと暮れていくことかと思わず溜息を漏らしたくなるような巴里の夕方も、それでも、しまいには暮れて、完全な暗闇が訪れた。 アル…

アルベルチーヌの死-2

アルベルチーヌの事故死を知らされて、まるで「抜け殻」のようになってしまった語り手のもとに、なんとそのアルベルチーヌから二通の手紙が届いた。 一瞬、ドキッとする語り手だったが、落ち着いてその手紙の消印をみれば、何ていうことはない、アルベルチー…

アルベルチーヌの死-1

いっさいの誇りを捨てて、どんな条件でもいいから戻ってきてほしい、何でもやりたいことをやってかまわない、ただ彼女が眠る前に週三度、いや週一度だけでもいいから、一分間だけキスをさせてもらえれば、という電報をアルベルチーヌに送った語り手のもとに…

鈴木道彦教授の全訳版「逃げ去る女」の帯にはこうある アルベルチーヌが落馬して死んだ 闇の底へと、私から逃げ去ったのだ

「アルベルチーヌさんはお発ちになりました!」-3

すぐにでもアルベルチーヌを僕のもとに呼び戻したい、そう考えた語り手は親友の、ゲルマント家の輝ける星、ロベール・ド・サン=ルーhttp://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040925に頼んで、アルベルチーヌが身を寄せたと思われる育ての親のポンタン夫人のところ…

「アルベルチーヌさんはお発ちになりました」-2

アルベルチーヌの残した手紙に書いてあったのは、以下のようなことだった。 『これから書くことを直にあなたにお話出来なくて、ごめんなさい。 だって、わたしはとても臆病で、あなたの前に出るといつもびくびくしてましたから。無理にお話しようとしても、…

「アルベルチーヌさんはお発ちになりました!」-1

「アルベルチーヌさんは出てっちゃいまいたよ、朝の九時に!」 フランソワーズのこの一言は、その直前まで、アルベルチーヌさえいなければ憧れのヴェネチアへも行けるし、自由になれると思っていた語り手、 彼女の与えてくれる小さな快楽と彼女のために失う…

その後の展開

秋に始まったアルベルチーヌと語り手の一つ屋根の下での生活は、こうして冬を超え、とうとう春がやってきた。 しかし、互いの嘘と不信が、相手の嘘と不信を招くという悪循環に陥ってしまう。アルベルチーヌさえいなければ、僕は憧れのヴェネチアにも行けるし…

鈴木教授の全訳版の帯にはこうある 七重奏曲(ヴァントゥイユ)を弾き終えたとき、 モレル(美少年)の前髪がはらりと落ちた

ヴァントゥイュの七重奏曲-4

シャルリュス男爵の傲慢不遜な態度に腸(はらわた)の煮えくりかえる思いだったヴェリュデュラン夫妻は、男爵の愛人、美貌のヴァイオリニスト、モレルに、男爵のさまざまな中傷を吹き込むのだった。 モレルはヴァントゥイュの七重奏曲を弾き終えると、前髪を…

ヴァントゥイユの七重奏曲-3

音楽は主として聴覚、次いで視覚に訴えて、我々聴衆をして、感動へと誘う芸術である。 その、音楽によって得られる感動を文字で表現しようとすれば、どうなるのか、それはほとんど不可能だと思うのだが、なんとかヴァントゥイユの七重奏曲の感動を文字で語り…

ヴァントゥイユの七重奏曲-2

ヴァントゥイユの七重奏曲は、たとえヴァントゥイユのソナタを知らない人々にもソナタと同じような喜びを与えるものだった、つまりソナタと同じくらい美しく、ソナタとは別物だった。 ソナタがユリのように白い田園ふうな暁(あかつき)に向かって開かれ、暁…

ヴァントゥイユの七重奏曲-1

あのスワンとオデットの運命の出逢いの場となったヴェルデュラン夫人の夜会へ、なぜ僕のアルベルチーヌは行こうとしたのか?その謎を知りたくて、語り手はその晩、ヴェルデュラン邸へと出向くのだった。 その途中に出会ったシャルリュス男爵は、この日、彼の…