2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ゲルマント公爵夫人の赤い靴-1

ゲルマント大公夫人邸の夜会に招かれているのかどうかを知りたくて、ゲルマント公爵夫妻が旅行先のカンヌから帰ってくるのを待っていた語り手は、その日の午後、一階の階段のところで一つの重大な発見をするのだが、ゲルマント公爵夫妻が帰ってきたことを知…

さらなるその後の展開

ゲルマント公爵家の豪華晩餐会、シャルリュス男爵邸への夜の訪問、それから二ヶ月が経った。 語り手は一通の手紙を受け取る。 「ゲルマント大公夫人は**日に在宅しております」 これはゲルマント大公夫人宅の夜会(ソワレ)への招待状なのだろうか? 社交…

その後の展開

この豪華なゲルマント公爵家の晩餐会に先立って、ロベール・ド・サン=ルーとパリの瀟洒な深夜営業のレストランで会食し、友情を確認しあっていた語り手は、サン=ルーから「伯父のシャルリュス男爵がゲルマント家の晩餐会が終わったら、君に屋敷に来て欲し…

ゲルマント公爵夫人の才気

ゲルマント家のとびきりにぎやかな晩餐会に出席した語り手はゲルマント公爵、ゲルマント公爵夫人を見て、こう思うのだった。 「ゲルマント家の人びとー少なくともその名に値する人びとーは、ただ単にすぐれた肉体や、髪の毛や、透きとおった眼差しなどといっ…

その後の展開

アルベルチーヌと再会し、恋の炎が再燃した語り手は…、というふうには進行してゆかないのがプルーストの「失われた時を求めて」である。 接吻した後、アルベルチーヌを帰してから、語り手はヴィルパリジ侯爵夫人の夜会へと赴き、そこでゲルマント公爵夫人に…

鈴木教授の全訳版の帯にはこうある ゲルマント一族の才気(エスプリ)が 一枚の豪奢な壁掛(タピスリー)を織りあげた

木下順二さんの『巨匠』

昨日、ユダヤ人に関する日記を書いていて、木下順二さんの舞台劇「巨匠」、正確にはこのことについて書いてある加藤周一さんの本「私にとっての20世紀」岩波書店刊を思い出してしまったので今日は「巨匠」について。 ナチ占領下のポーランドのある田舎町。 …

ユダヤ人って簡単にいうけれど…

ビリー・ワイルダー監督はユダヤ人だ、ウッディ・アレンもユダヤ人だ、レナード・バーンスタインはユダヤ人だし、我がクレンペラーもユダヤ人だ、トーマス・マンはユダヤ人だし、マーラーもユダヤ人だ、…、こんなことをいっても何もならないのだが、プルース…

年末と第九

マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の感想日記を八月から書いているが、たまには「はてなダイアリー」に別な日記を書きたい時もある。 今日はある事情から、朝から第九を聴き、観た。 ベートーヴェンの第九は日本では何故、何時頃から年末に…

アルベルチーヌとの接吻(キス)-2

家政婦は見た! ベッドに横たわる語り手の隣にアルベルチーヌ・シモネが寄り添おうとするところを、それまで語り手の部屋の鍵穴から見つめていた家政婦のフランソワーズは、アルベルチーヌが語り手のベッドにベッド・インしたその途端に語り手の部屋のドアを…

アルベルチーヌとの接吻-1

それはまったく、突然に起こった。 祖母と一緒にひと夏を過ごした、ノルマンディーの、海のバルベックで出会った花咲く乙女達の一人、ポロ帽を目深に被り自転車を曳く少女、アルベルチーヌがパリのアパルトマンに突如として現れたのだ! 『今夜はあなたのグ…

その後の展開

祖母の死を厳粛に見送った語り手だったが、悲しみに打ちひしがれた日々が展開していくかと思うと、けっしてそういう展開にはならないのだった。 語り手はこう語り始める。 『その日はごく普通な秋の日曜日にすぎないのに、私はたったいま生まれかわったばか…

祖母の病気と死

海のバルベックで、語り手の靴紐を優しく結んでくれたり、語り手はもう寝付くことが出来たのかとか、いつも語り手のことを心配してくれていた祖母が病んだ。 ある医者からウォーキングhttp://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040628を薦められた祖母を見守って語り…

2004/01/01 (木) 「新春放談」

【mii】:新年明けましておめでとうございます。 【maa】:二度目の対談からもう一ヶ月半、真冬になってしまいましたね。 【mii】:昨年に続いて、お忙しいにもかかわらず、有難うございます。 【maa】:さて、プルーストの『失われた時を求めて』、いかがですか…

ヴィルパリジ侯爵夫人のサロンにて-3

サン・ルーはゲルマント公爵夫人に恋焦がれている語り手に気を使って、語り手をゲルマント公爵夫人のそばの椅子にかけさせてくれたのだったが、もじもじして、あがってしまった語り手は、いっこうに公爵夫人と上手にお話が出来ないのだった。 そして、スワン…

ヴィルパリジ侯爵夫人のサロンにて-2

ゲルマント夫人は、もう座っていた。名前に公爵夫人という称号が備わっているために、現実の公爵夫人の身体も公爵領をひきずっており、それが周囲に投影されて、サロンの真ん中で彼女が腰をおろしているクッションのまわりには、金色の光のさしこむゲルマン…

ヴィルパリジ侯爵夫人のサロンにて-1

プルーストの小説「失われた時を求めて」にはさまざまなサロンが登場するのだったが、なかでも山羊座の男シャルル・スワンとさそり座の女オデットが出逢うブルジョアの“ヴェルデュラン夫人のサロン”はその白眉だろう。 語り手の父は学士院会員に立候補しよう…

語り手の恋

ライコス時代から僕の日記をずーっと読んでくれている方(かた)からメールをいただいた、『人間関係が複雑になってきて分かり難くなってしまいました』と。で、今日はいままでの語り手の恋を極々簡単に書いてみようと思う。 語り手が幼い頃の休暇を過ごした…

「オペラ座にて」のその後の展開

オペラ座に行ったその日から語り手はすっかりゲルマント公爵夫人に夢中になり、毎日、夫人の散歩する道で待ち伏せをして、さも偶然に出会ったかのような顔で挨拶するのだったが、公爵夫人はひどく素っ気無い態度で応えるだけなのだった。 これ以上夫人に近づ…

天才と秀才

あることがあって、昨夜考えてしまった。「天才」の仕事は古びないが、「秀才」の仕事は古びていってしまうのではないだろうか?逆にいえば、その仕事が「天才的」だったか、「秀才的」であったかは、次の時代が証明する、のではないだろうか?このぼくの考…

オペラ座にて-4

地下の迷路に怪人が住み、さらにその下には湖が存在すると思われているパリのオペラ座、その一階椅子席はまるでサンゴ礁のような気のする語り手だったが、そのサンゴ礁にいる語り手からは、バルコニー席に忽然と姿を現したゲルマント公爵夫人はまるで湖に浮…

オペラ座にて-3

もともとゲルマント大公夫人とゲルマント公爵夫人とは従姉妹同士なのだったが、二人共名門中の名門貴族ゲルマント家に嫁いだのだった。 この日のオペラ座にはゲルマント公爵夫人は遅れてしまって開演後にバルコニー席に入ってきたのだが、大公夫人の頭から首…

オペラ座にて-2

語り手にとっては二度目のラ・ベルマの舞台だったが、オペラ座の舞台で観るラ・ベルマの演技こそは、原作のまわりに生みだされた第二の作品であり、彼女の天才によって生命を与えられた彼女の作品なのであった。 そして語り手は理解するのだった、原作者の書…

オペラ座にて-1

語り手は父が貰ったオペラ座の特別公演(ガラ・コンサート)の一階椅子席のチケットを、祖母を介して受け取ったのだが、それは以前憧れ、現実の舞台を観てがっかりしてしまったあのラ・ベルマの舞台だった。 オペラ座の大階段を昇っていく時、語り手はそのう…

名前の時代

『ゲルマントの方』の第一の断章は『名前の時代』。 舞台はパリ。語り手とその一家はゲルマント一族の人々の長老、語り手の祖母のクラスメートでもあるヴィルパリジ侯爵夫人の紹介で、ゲルマント家の館の一角にあるアパルトマンへと引っ越してくる。コンブレ…

ゲルマントの方

幼い頃、ママンのお休みのキスを待ちわびたコンブレーには、二つの散歩道があって、一方はスワンというユダヤ系フランス人の、エスプリに富んだ富裕な趣味人の家へと通じていた。そして一方の散歩道は6〜7世紀のフランスの歴史に迄、遡るのことの出来る、あ…

鈴木道彦教授の全訳版の帯にはこうある ゲルマント公爵夫人はオペラ座の女神であった