映画「ワルキューレ」

櫻井翔さんの「ヤッターマン」といえばトム・クルーズ主演の映画「ワルキュ−レ」が公開されるらしい。

ワルキューレ」といえば、フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」で取り上げられて以来、一躍世に広く知られるようになったが、
http://www.youtube.com/watch?v=Gz3Cc7wlfkI
もともとはゲルマン神話で神々の長(おさ)ヴォータンの娘たちを表わす言葉。
戦場で死んだ勇者たちを天空へと運ぶ役目をしている戦乙女(いくさおとめ)と訳されている。

ワーグナーの四部作「ニーベルングの指環」の第一夜が「ワルキューレ」で、このオペラの第三幕冒頭が「ワルキューレの騎行」で始まるのだ。このとき、戦場で亡くなった勇者たちを天空に運ぶのは馬である。けっしてヘリコプターではない。ワーグナーの「ワルキューレ」を巧く演奏するには馬のリズムでないと美味くないとぼくは思う。

ダニエル・バレンボイムの指揮する「ワルキューレ」はヘリコプターのリズムで演奏され、ハンス・クナッパーツブッシュの「ワルキューレ」は天空を駆ける馬のリズムで演奏されている、ぼくにはそう聴こえる。

2009年1月、ドイツ、ワルハラ社からクナの指揮する1958年バイロイト音楽祭での「ニーベルングの指環」四部作の「ワルキューレ」が分売された。

リーマン・ブラザースは昨年秋、あっけなく父さんしてしまったが、ワーグナーもせっかくオッタテタ「バイロイトシアター」をお父さんしないように知恵を絞った。その結果、生まれたのがオペラ「パルジファル」という作品である。
ワーグナー著作権で「パルジファル」をバイロイトでしか演奏させないようにしたのだ。したがって「パルジファル」という作品を鑑賞したければ俺んとこへ来い、というわけで、彼の死後もバイロイトは繁盛するだろうという企画である。

そんな秘曲「パルジファル」を1951年から1960年代初頭にかけて、バイロイト音楽祭で毎年毎年、演奏し続けた指揮者がハンス・クナッパーツブッシュである。
クナはヒットラーに睨まれ第二次世界大戦中は冷遇されていた。ヒットラー暗殺計画の映画「ワルキューレ」に、クナは草葉の陰からどんな思いを寄せるだろうか。

↓著者は東大法学部卒のバンカー。1958年のバイロイト音楽祭とクナの指揮ぶりが詳しく語られている。

巨匠たちの音、巨匠たちの姿―1950年代・欧米コンサート風景

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