「西行花伝」

11月3日の夜11時頃、はてなの日記にリンクさせた笹尾さんの「パリの花屋さん。」を確かめにアマゾン書店に行ったのだったが、久しぶりのアマゾンなので、好きな作家、福永武彦辻邦生もチェックしておいた。福永さんは相変わらず「海市」の再発もないし、あまり代わり映えしない印象だったが、辻さんはけっこう沢山、文庫化、再発売化されていて、嬉しかった。

なかでも、初版のときに購入し、読もうと思い、何度かトライしたものの、二〜三度挫折し、四度目はなんとか最後まで読んだものの、字面を追っただけでほんとに読んだという感慨が得られなかった「西行花伝」が新潮社から文庫化され、ある方のブックレビューを読んで、早速、再読する気持ちに捕われ、結局、「序の帖」、「一の帖」、「二の帖」まで読んでしまった。そのブックレビューを以下に引用しておく。

理想の男性, 2005/9/9
By みちがえる

創作とはいえ、この本を読んでいる時に私が絶叫していたのは、「こういう男性に出会いたい!」でした。他の方のレビューを台無しにしてしまうかもしれませんが、この本の中の恋は、道なってもみちならなくても美しい。子育てに追われる、枯れてきた身としては、この本の中に描かれる恋に恋をしてしまいました。歴史モノは苦手で、しかもこのぶあつい本を手にした時はどうして血迷ったか?!と思いましたが、しっかり読みきってしまいました。そして今も一番大切な本の中のひとつとしてあります。また、人間関係に疲れている人のココロに響くような言葉もたくさんあり、本当に傑作だと思います。


思えば辻邦生さんの小説に初めて出会ったのは大学進学課程一年の春で、図書館で偶然見かけた「安土往還記」であった。そしてこんな凄い本が献呈されている森有正さんっていう人もきっと凄い人なのだろうな、と思って読んだのが森さんの「遥かなノートルダム」だった。

そんな辻さんだったが、どうにも美味く読めなくなってしまったのが「眞昼の海への旅」からである。そして決定的に読めなくなったのがあの世評高い「背教者ユリアヌス」なのだから、これでは完全に「辻邦生ファン失格」である。しかし、「春の戴冠」と「時の扉」はもう夢中になって読み耽ったのだから自分でも何が何だか良く解からない。

そんなわけで、あの「本格小説」の作者のかたとの「手紙、栞を添えて」も未読だし、「フーシェ革命暦」、「樹の声、海の声」も初版で購入しただけで積読(ツンドク)である。



辻邦生さんの「西行花伝」、裏表紙を見れば1995年4月30日初版発行とある。購入してから13年経過して、初めて読み耽るというのも悪くはないな、と思った2008年11月の夜だった。

西行花伝 (新潮文庫)

西行花伝 (新潮文庫)