マドレーヌ

mii06252006-10-07


La

すでに多くの歳月の過ぎたある冬の一日、家に帰った私がひどく寒がっているのを見て、母は、ふだん飲まない紅茶でも少し飲ませてもらっては、と言いだした。私ははじめ断ったが、それからなぜか、気が変わった。母は、「プチット・マドレーヌ」と呼ばれるお菓子を一つ、持ってこさせた。

  • 蘇る過去

http://d.hatena.ne.jp/mii0625/20040812

けれども、人びとが死に、物は壊れ、古い過去の何ものも残っていないときに、脆くはあるが強靭な、無形ではあるがもっと執拗で忠実なもの、つまり匂いと味だけが、なお長いあいだ魂のように残っていて、ほかのすべてのものが廃墟と化したその上で、思い浮かべ、待ち受け、期待しているのだ、その匂いと味のほとんど感じられないほどのしずくの上に、たわむことなく支えているのだ、あの巨大な思い出の建物を。


失われた時を求めて 1 第一篇 スワン家の方へ 1 (集英社文庫)

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